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シャンのいろいろ2

リニューアルしました

mollifierでモリモリ(2 性質その1)

前回の記事に引き続きmollifierについて扱っていきます. 今回は重要な性質をまとめます.

まずは性質のうち, 微分可能性について挙げます.

 Theorem1 

 \{\rho_\varepsilon\}_{\varepsilon \gt 0} をmollifierとし,  f \in L^p(\mathbb{R}^N)  (1 \le p \lt \infty) とする. このとき, 各  \varepsilon \gt 0 を固定したとき,  \rho_\varepsilon f の畳み込み

\begin{eqnarray}
( \rho_\varepsilon \ast f)(x) := \int_{\mathbb{R}^N} \rho_\varepsilon(x-y)f(y)\ dy
\end{eqnarray}

 は \mathbb{R}^N 上の  C^\infty 級関数で,  \alpha \in \mathbb{Z}_+^N に対して  \partial^\alpha( \rho_\varepsilon \ast f) = (\partial^\alpha \rho_\varepsilon) \ast f となる.

 mollifierは日本語ではしばしば軟化子とか呼ばれたりしますが名前の通りの良い性質ですね. 畳み込みが滑らかな近似になってくれるんですねえ. 

一応証明を載せておきます.

Proof.

 1/p + 1/q =1 なる  q \in \mathbb{R} を取る. このときHölderの不等式から

\begin{eqnarray}
|(\rho_\varepsilon \ast f)(x)| &\le& \int_{\mathbb{R}^N} |\rho_\varepsilon(x-y)||f(y)|\ dy \\
&\le& ||f||_p\left( \int_{\mathbb{R}^N}|\rho_\varepsilon(x-y)|^q dy \right)^\frac{1}{q} .
\end{eqnarray}

右辺の積分は各  x \in \mathbb{R}^N に対して有限の値を取ることから  (\rho_\varepsilon \ast f)(x) は有限の値を取る. 

連続性については,  \check{f}(x) := f(-x),  T_hf(x) := f(x-h) として

\begin{eqnarray}
\left|(\rho_\varepsilon \ast f)(x) - (\rho_\varepsilon \ast f)(x') \right| &=& \left| \int_{\mathbb{R}^N} \rho_\varepsilon(y)\{\check{f}(y-x) - \check{f}(y-x') \} \ dy\ \right| \\
&\le& ||\rho_\varepsilon||_q || T_x\check{f} -  T_{x'}\check{f}||_p
 \end{eqnarray}

 となるから, Lebesgue積分の不変性を用いることでわかる. 

次に  \rho_\varepsilon \ast f微分可能性を見る. 各  i(=1,\cdots,N) に対して  e_i を第  i 成分方向単位ベクトルとし,  t \in \mathbb{R}\backslash\{0\} とする. このとき, 

\begin{eqnarray}
\frac{1}{t} \{ (\rho_\varepsilon \ast f)(x + te_i) - (\rho_\varepsilon \ast f)(x) \} = \int_{\mathbb{R}^N} \frac{\rho_\varepsilon(x+te_i-y) - \rho_\varepsilon(x-y)}{t}f(y)\ dy .\tag{#}
\end{eqnarray}

 ここで, 各x \in \mathbb{R}^N,  \varepsilon \gt 0 について,  0 \lt |t| \le 1 の範囲ではmollifierの定義から  |x-y| \gt 1+\varepsilon なる任意の  y \in \mathbb{R}^N に対して  \rho_\varepsilon(x+te_i-y) = \rho_\varepsilon(x-y) =0 である. これより (#) の右辺の積分範囲は  B(x,1+\varepsilon)  としてよい. 

また, 平均値の定理から

\begin{eqnarray}
\left| \frac{\rho_\varepsilon(x+te_i -y) - \rho_\varepsilon(x-y)}{t} \right| \le \max \left\{ \left| \frac{\partial\rho_\varepsilon}{\partial x_i}(z) \right| ; |z-x| \le 1+\varepsilon \right\}.
\end{eqnarray}

であるから, 導関数の定義とLebesgueの優収束定理を用いれば, 

\begin{eqnarray}
\lim_{t \to 0}\frac{1}{t}\{(\rho_\varepsilon \ast f)(x +te_i)- (\rho_\varepsilon \ast f)(x) \} &=& \int_{\mathbb{R}^N} \frac{\partial \rho_\varepsilon}{\partial x_i}(x-y)f(y)\ dy \\
&=& ((\partial_i \rho_\varepsilon) \ast f)(x).
\end{eqnarray}

ここで,  \partial_i \rho_\varepsilon もまた  C^\infty 級であり,  \text{supp}(\partial_i \rho_\varepsilon) \subset B(0,\varepsilon) であるから, 上の議論を繰り返すことができて, それより  \rho_\varepsilon \ast f C^\infty 級であり,  \partial^\alpha (\rho_\varepsilon \ast f) = (\partial^\alpha \rho_\varepsilon)\ast f がわかる. □ 

不変性など, Lebesgue積分特有の性質を使って証明してるのは味わい深いです. 微分可能性については積分論の本などで積分記号下での微分について読んだことがある方ならもう少し簡略化できるかと思います. あとは畳み込みについても詳細な説明は省いていますが, ここではきちんと有限の値として存在していることを冒頭で示しているので許してください.

少しずつだけどはてなブログで数式を書くのにも慣れてきました. 次回はmollifierとの畳み込みが L^p(\mathbb{R}^N) の関数を近似する性質について書きます. あと, 間違ってたらこっそり教えてください

mollifierでモリモリ(1 定義)

以前のブログがごちゃごちゃしていたけど新しい内容が書きたくなったのでこの度ブログをリニューアルしました. その記念じゃないけどはてなブログで数式を書く練習がてらにかねてからまとめたかったFriedrichsのmollifierについて書いておきます. 

早速なんですけど定義をしておきましょう.

Def.(Firedrichsのmollifier)

  {\mathbb{R}^N} 上の無限回微分可能な非負関数  \rho(x)  で,  {\rho(x) = 0  (|x| \gt 1 ) } をみたすものを取る. この  \rho(x) に対して, 連続なパラメータ  \varepsilon \gt 0 を持つ

 \displaystyle \rho_{\varepsilon}(x) := \frac{1}{\varepsilon^N}\rho(\frac{x}{\varepsilon})

という関数の族  \{\rho_\varepsilon \}_{\varepsilon \gt 0} (Friedrichsの)mollifierという.

 さて定義したのはいいんですけど, そもそもこのような関数  \rho(x) が存在するか問題がありますね. まあ数強の方ならパパっとわかると思うのですが, ここでは例として次のようなものを上げておきます;

 \displaystyle \rho(x) := \begin{cases} C \exp(-\frac{1}{1-|x|^2})    (|x| \lt 1) \\ 0            (|x| \ge 1). \end{cases}

 ただし,  \displaystyle C^{-1} = \int_{\{|x|\lt 1 \}}\ \exp(-\frac{1}{1-|x|^2})\ dx とします. 

 C が有限の値を取ることや  \rho C^\infty 級であることは微分積分の内容なのでここでは割愛します. 松本先生の多様体の基礎なんかにも載ってます.

 

定義しかしてないというドチャクソうっすい内容ですが, 想像以上にはてなブログの編集に不慣れだったので今日はこのへんにしておきます...次回はmollifierの性質について書きます. 最終的にはこれらを使って解析学のとても重要な定理である変分法の基本補題を示します. すぐ書くかは定かではないので気になった方は是非ご自分で勉強してみてください.