シャンのいろいろ2

リニューアルしました

局所可積分性について少しだけ

ちょっと久しぶりの更新になります.

前回の記事で「次こそ変分法の基本原理を示す」といったのですが, その一歩手前として表題にもある通り局所可積分性について少し言及をしておこうと思います. 

Definition (局所可積分)

 \Omega \subset \mathbb{R}^N を開集合とする.  \Omega 上の可測関数  f  \Omega に含まれる任意のコンパクト集合上で可積分であるとき,  f \Omega 上で局所可積分であるという. また, 局所可積分な関数全体の集合を L_\text{loc}^1(\Omega) で表す.

より一般に  1 \le p \lt \infty に対して,

\begin{eqnarray}
L_\text{loc}^p(\Omega) := \{f:\Omega \to \mathbb{C}\ \text{ measurable };\ \forall K \subset \Omega:\text{compact},\ f \in L^p(K) \}
\end{eqnarray}

と定義される. 

 定義から直ちにわかるように,  1 \le p \lt \infty なる任意の  p に対して  L^p(\Omega) \subset L_\text{loc}^p(\Omega) です. 

・・・と, 定義をしたはいいんですけど, 局所可積分性がどのくらい有用なものかがわかりません. ひとまず, 直後に用いる重要な性質をひとつだけ挙げておきます.

 Proposition 

 \Omega \subset \mathbb{R}^N を開集合とする.  1 \le p \lt \infty なる任意の  p に対して,  L^p(\Omega) \subset L_\text{loc}^1(\Omega) である. 

 Proof. 

 f \in L^p(\Omega),  K \subset \Omega\ :\text{compact} とする.  \chi_K K 上の特性関数とすると, Hölderの不等式を用いれば

\begin{eqnarray}
\int_K |f(x)|\ dx &=& \int_\Omega |f(x)\chi_K(x)|\ dx \\
&\le& \left(\int_\Omega |f(x)|^p\ dx \right)^\frac{1}{p} \left(\int_\Omega |\chi_K(x)|^q\ dx \right)^\frac{1}{q} \\
&=& ||f||_{L^p(\Omega)}\left(\int_\Omega\ dx \right)^\frac{1}{q} \\
&=& ||f||_{L^p(\Omega)}\mu(K)^\frac{1}{q} \\
&\lt& \infty.
\end{eqnarray}

 ただし  \mu(K) K のLebesgue測度を表す. □

 

ついでに, これとほとんど同じようにして  L_\text{loc}^p(\Omega) \subset L_\text{loc}^1(\Omega) もわかります.

上の命題が主張していることは「局所可積分であることは多くある可積分性に関する条件の中でも非常に緩いものである」ということです. 11451419198104545893回くらい話題に上がっている変分法の基本原理は, なんと可積分性に関する仮定としてこの局所可積分であることしか仮定していません!要するに汎用性が高いってことですね.

今回はこの辺にしておいて, 本丸の定理は次回たっぷりと扱うことにしましょう.