より一般のミンコフスキーの不等式(Minkowski inequality integral form)
前回の記事をもって一段落したので, 時期も時期なので新入生向けのゆるーい記事でも書こうかと思ったのですが, 今日あった関数解析の講義でふと思い出したのでより一般のMinkowskiの不等式について書いておこうと思います. 日本語での記事があまり見受けられなかったので未来の有望な解析学マンに向けて残しておきます. 英語ではタイトルにもあるとおりMinkowski inequality integral formとか呼ばれています. WikiにはMinkowski’s integral inequalityと書かれています(Minkowski inequality - Wikipedia).
Theorem (Minkowski inequality integral form)
を測度空間とし, その直積測度空間を とする.
と 上の可測関数 に対して, 次が成り立つ;
\begin{eqnarray}
\left(\int_{\Omega_2} \left\{\int_{\Omega_1} |f(x,y)|\ d\mu_1 \right\}^p\ d\mu_2 \right)^\frac{1}{p}
\le \int_{\Omega_1} \left\{\int_{\Omega_2} |f(x,y)|^p\ d\mu_2 \right\}^\frac{1}{p}\ d\mu_1 .
\end{eqnarray}
Proof.
の場合はFubiniの定理より明らかなので, とする.
とすると, は可測関数である.
が のほとんど至るところで であるとするとほとんど至るところで であるから題意は明らかなので, そうでないとすれば,
\begin{eqnarray}
\int_{\Omega_2} F(y)^p\ d\mu_2 &=& \int_{\Omega_2} F(y)^{p-1}\left(\int_{\Omega_1}|f(x,y)|\ d\mu_1 \right)\ d\mu_2 \\
&=& \int_{\Omega_2}\left(\int_{\Omega_1} F(y)^{p-1} |f(x,y)|\ d\mu_1 \right)\ d\mu_2 \\
&=& \int_{\Omega_1} \left(\int_{\Omega_2} F(y)^{p-1}|f(x,y)|\ d\mu_2 \right)\ d\mu_1 \\
&\le& \int_{\Omega_1} \left(\int_{\Omega_2} |f(x,y)|^p\ d\mu_2 \right)^\frac{1}{p} \left(\int_{\Omega_2}F(y)^{q(p-1)}\ d\mu_2 \right)^\frac{1}{q}\ d\mu_1.
\end{eqnarray}
ただし は の共役指数() である.
(※ 2~3行目でFubiniの定理, 3~4行目でHölderの不等式を用いた)
上式の右辺について, であることと, は について定数である. 従って上式の両辺を で割ると結論を得る. □
今までさんざん取り扱ってきたmollifierの話の中でしばしば畳み込みが絡んできますが, この不等式を用いることで証明が一部簡略化することができます. しかし具体的にどこで適用できたか忘れてしまったのでこの記事を読んだ方, 適用したら教えてください.
また, なにかしらの不備があった場合にも教えていただけると幸いです.
冒頭に少しだけ触れた新入生向けの記事は, 集合と関数, 写像について書こうかなーとぼんやり思ってました. ぼく自身がかつて新入生として大学に入った時に最初に習った微分積分や線形代数で当時よくわからないまま扱っていた思い出があるからですね. (実際書くかはわから)ないです.
解析について書くとすれば筆頭に上がるのはRademacherの定理とかですかね. 証明が少しだけ長いので悩むんですけどね~.
今回はこの辺で終わりにしとこうと思います.