ようやく示す変分法の基本原理
また間が空いてしまいましたが, 散々引っ張ってきた定理の証明をやっていきましょう.
Theorem3(変分法の基本原理)
を開集合, とする. このとき が任意の に対して
\begin{eqnarray}
\int_\Omega f(x)\varphi(x)\ dx = 0
\end{eqnarray}が成り立つならば, である.
Proof.
・Step1 ( の場合を示せば十分なこと)
まず, として集合 を
\begin{eqnarray}
\Omega_n := \{x \in \Omega\ ;\ d(x,\Omega^C)\gt 1/n,\ |x|\lt n \}
\end{eqnarray}
と定める. ただし, (点と集合の距離)である. まず定義から である. また, 任意の に対して であったから, 仮定より である. 各 上で となることが言えれば題意を示せるから, これより初めから の場合についてのみ示せば十分である.
・step2 ( の元に対する証明)
をmollifierとすると, に対して
\begin{eqnarray}
\widetilde{\Omega}_{n_0} := \{x \in \Omega\ ;\ d(x,\Omega^C) \gt 1/n_0 \}
\end{eqnarray}
と定める. ならば なる自然数 について, は の関数として の元と見なせる. よって仮定から
\begin{eqnarray}
(\rho_{1/n} \ast f)(x) &=& \int_\Omega \rho_{1/n}(x-y)f(y)\ dy \\
&=& 0\ (x \in \widetilde{\Omega}_{n_0}).
\end{eqnarray}
一方, として と見なしてTheorem2を用いると
\begin{eqnarray}
||\rho_{1/n} \ast f - f||_{L^1(\widetilde{\Omega}_{n_0})} &\le& ||\rho_{1/n} \ast f - f ||_{L^1(\mathbb{R}^N)} \\
&\to& 0\ (\text{as } n \to \infty).
\end{eqnarray}
よって である.
であるから, . □
とまあ, こんな感じで無事に証明がなされました. 前々回に示したmollifierの性質をフルに活かすことでとても便利な定理がわかるんですねえ. 解析力学などの物理の一部の本には「 は任意なので...」と一言添えるだけですんなり納得させがち(最も, 物理の場合は"任意の連続関数"としていることがほとんどのように思えますが)なことをきちんと数学的に正当化できることは大きなメリットだと思います.
数学的にも, 超関数の微分が一意的であることがまさに変分法の基本原理の主張そのものだったりして, とても有用です. これを読んでくれた方はぜひ変分法の基本原理という解析学の強力な定理を使って数学ライフをエンジョイしましょう!
ところで, 数学についてこのブログでこれから書いてくことがなくなってしまったのですがどうしましょうかねえ. 積分論や測度論は大事だけどここで書くにはちょっとしんどいし, このまま関数解析についての内容を垂れ流すだけでも(楽しいけど)単調でつまらないと思うので, まあなんかしら考えてみます. アホみたいなプライベートを書いてもいいと思うんですがきらびやかさがなさすぎて自分で悲しくなるんで控えめにしておきます.